俺は委員長宅に留まることにした。自分自身女の子一人行かせるのは心配だが、、、余計な心配をかけさせて委員長を困らせたくはなかった。。。
洋一「。。。お店ってここからすぐ近くなんだよね。」
俺は委員長に尋ねた。
茜（委員長）「うん。ちょっと右に曲がってすぐのところだから。。。そう何分もかからないよ。」
かおる（茜のお母さん）「。。。でもねぇ。」
茂（茜のお父さん）「お前は少し心配しすぎるんだ。茜はもう大人なんだぞ！」
お父さんがすかさず助け舟をよこす。。。
茜（委員長）「ねぇ。お母さんいいでしょう？」
お母さんは少し思案した後で。。。
かおる（茜のお母さん）「仕方がないわ。茜、遅くならないうちに帰ってくるのよ。」
茜（委員長）「はい。」
委員長は返事をすると買い物籠を持って家を出て行った。
茂（茜のお父さん）「それでは茜が戻るまでの間、ここで寛いでいてください。」
そういうと茂はかおるを伴って２階にある自分たちの部屋に戻っていった。そして、いつの間にか居間にいるのは俺とマリレイの二人きりになっていた。。。。

二人きりになったことで俺は堅苦しい雰囲気から解放された気分になり以前から気になっていたことを語るいい機会と思いマリレイにあることを言った。。。
洋一「そういえばお前。どうして万能鍵なんか持っているんだ？」
マリレイ「えっ？」
俺はごく自然な質問をしたつもりだった、、、マリレイが万能鍵を使って人の行動や自然現象までも変えてしまう能力をどうやって得たのか知りたいのは当然だと思っていた。しかし、マリレイはその質問に少し躊躇して、、、
マリレイ「。。。分からないの。。。」
洋一「どうして？」
マリレイ「。。。よく覚えてないの。。。記憶がないというか。。。」
俺から鍵を返してもらって自分の願いをかなえるという目的があるにもかかわらず。なぜ自分が万能鍵を持っているのかが分からないはずはないと思うのだが、、、
洋一「都合が良すぎるんじゃないか？」
マリレイ「自分でもそう思うんだけど、、、」
マリレイは少し考えてから、、、
マリレイ「、、、万能鍵のせいかもしれない、、、」
マリレイは手から鍵を出すとそれをじっと眺めていた、、、万能鍵は中世の西洋風の装飾が施されており鍛冶職人が丹精に作っていたことが伺える。。。
洋一「なんか鍵に関する逸話とかないのか？」
マリレイ「、、、う〜ん。」
マリレイが思い悩んでいるときちょうど委員長が買い物袋を提げて帰ってきた。
茜（委員長）「ただいまぁ〜。」
洋一「ねぇ委員長。最近興味のある昔話ってある？」
俺は委員長に聞いたほうがいいと思った。委員長はクラス委員の他に文芸部に所属していてその手の逸話や昔話に精通していると思ったからだ。そして、俺がいきなり質問してきたので委員長は首をかしげながらも。。。
茜（委員長）「洋一君。なにいきなり昔話を持ち出してきたりして、、、いいわ。最近興味あるのは鍵師の話よ。」
洋一「。。。鍵師の話。。。？？」
鍵師。。。開かなくなった扉を開けたり鍵を修理したりするスペシャリストのことか。。。下手をするとすぐ警察の御用になりそうな職業になぜ委員長が興味を持つのか分からないけれど。。。マリレイに関係するかもしれないと思うと聞いてみる価値はありそうだった。
マリレイ「。。。聞いてみたいな。。。」
マリレイも興味を持ったようである。。。
茜（委員長）「ちょっと待っててね。私の部屋からその本を持ってくるから。。。」
委員長は買い物袋から買ってきた品を冷蔵庫へ入れると本を取りに自分の部屋へ行った。。。

むかし、町を治める領主の娘とその領主の屋敷の鍵を直していた鍵師がいた。。。

あるとき鍵師と領主の娘は恋仲になり鍵師は娘の部屋の鍵を修復する傍らでもう一振り合鍵を作った。。。

それは鍵師が夜な夜な娘の部屋に忍び込むための合鍵だったが。。。領主は二人の仲を認めないばかりか鍵師を町から追い出してしまった。。。

鍵師は途方にくれていたとき、合鍵の中から鍵の精が現れた。。。

もし、あなたが娘を愛しているならばこの鍵に命を託していきなさい。そうすれば永遠の愛を得られるでしょう。。。

鍵師は言われるままに鍵を握り締めると鍵から光が漏れ出し鍵師を包み込むと光が消え後には鍵だけが残った。。。

鍵師が消えた同じ時。。。領主の娘が自分のために作ってくれた鍵師の鍵を見つめていたとき、鍵の中から鍵の精が現れて。。。

もし、あなたが鍵師を愛しているならばこの鍵に命を託していきなさい。そうすれば永遠の愛を得られるでしょう。。。

領主の娘は言われるまま鍵を握り締めると鍵から光が漏れ出し娘を包み込むと光が消え後には鍵だけが残った。。。

そして、残った二振りの鍵は後を追うように消えてしまったという。。。

娘を失った領主は鍵師が町に入り込み娘を連れ去ったのだと嘆き悲しんだが。。。二人の消息は掴めずに失意のうちに死んでいったという。。。

茜（委員長）「ざっとこんな感じの話ね。ヨーロッパの昔話は教訓とか悲劇が多いんだけどこれもその一つね。。。ただ、鍵師と領主の娘が本当に結ばれたのかどうか分からないのがこの作品の欠点よね。。。」
委員長は大まかなあらすじで語ったが。。。聞いていた俺が思うに。。。永遠の愛を得るためには”死”を持ってしか得られないということなのか。。。しかし、マリレイとこの本を結び付けるにはいささか強引のようにも思える。。。なぜなら、俺は鍵を持っているが委員長は持っていないからだ。。。しかも持っているのはマリレイである。。。
洋一「。。。あまり。。。参考にならなかったか。。。」
マリレイ「。。。うん。。。」
俺もマリレイも期待していたほどの話ではなかったので少し下を向いていると。。。
茜（委員長）「？。。。なんのこと？？」
委員長が訝しげに聞くので。。。
洋一「なんでもないよ。うん。面白かった。そうだろ、マリレイ。」
マリレイ「あっ。。。うん。面白かった。。。」
茜（委員長）「？？？」
委員長は少し納得いかないようだったが。。。
茜（委員長）「あっ。。。そうだ！お母さん達を呼んでこなくっちゃ。。。今日は英会話初日だもんね。」
委員長は両親を呼びに２階へあがるとしばらくして両親と共に降りてきた。そして、マリレイを中心に英会話が賑やかかつ楽しく進み今日の一日を終えた。。。