俺は少し躊躇したが、、、バイトを断ることにした。家計はマリレイのバイトでも補えないほど逼迫（ひっぱく）していたが底をつくまではなんとかなるだろうと思っていたしそれに約束を破ることなんて俺にはできないことだった。。。
洋一「俺、バイト断ることにしたよ。」
上都葵「（洋一くん？今なんていったの？？）」
電話越しなので向こうの様子は分からなかったが、、、俺はもう一度。。。
洋一「俺、バイト断るよ。」
上都葵「（なっ。。。なんですってぇ！！）」
葵が突然ヒステリックになって何かを蹴飛ばす音がする。。。すると。。。
（おやめくださいお嬢様！）
執事らしき人の声が聞こえる。。。
上都葵「（どうして！こっちが親切にバイト紹介してやってるのにぃ〜あなたはなんて馬鹿なのよぉ〜！！！）」

上都葵「（ああぁああああぁぁぁぁぁああああ〜！！！）」

（ダンッダンッダンッダンッダンッダンッダンッ！！）

何かをしきりに蹴飛ばしている。。。何を蹴飛ばしているのかこちらからは分からない。。。
（ぎやぁ！）
悲鳴が聞こえる。。。なんだ？
（こりゃやばいぞ！瀕死の重症だ！！）
（救急車だ！早くしろ！！）
ざわざわ騒ぎ出しているぞ。。。
上都葵「（はぁ〜間違えて人を蹴っちゃったじゃないの！）」
洋一「おっ。。。俺のせいかよ！」
上都葵「（あぁ〜違う違う。こっちのこと！で、、、バイトしないのね。そう分かったわ。いいでしょう。でもね洋一くん。。。私、諦めないからね。。。）」

プツンプープープー

何がなんだか分からないうちに向こうが一方的に電話を切っていた。。。
洋一「。。。。。。。」
しばらく俺は押し黙っていた。。。葵がニガテなのは陰険なことだけではなかった、、、それはあのヒステリックな性格にもあった。愛用していたおもちゃが壊れると突然泣き出す子供のように葵は怒り出す。。。それは恐ろしく怖かった。。。だから葵をあまり怒らせたくはなかった。。。しかし、自分の考えは曲げることなどできない。それが間違っていたとしてもだ。そして俺は意を決するように。。。
洋一「。。。よし！これで断ったからな。。。しかし、ちょっと時間がかかったみたいだ。とにかく委員長宅へ急ごう。」
というと駆け足で委員長宅へ向うのだった。。。

。。。俺はふと用事を思い出したかのように途中のスーパーに駆け寄った。。。まぁ〜遅くなったこともあるし、、、ちょっとしたものでもと思ったからだ。。。
洋一「遅くなっちまったからなぁ〜。手ぶらで委員長宅にお邪魔するのもなんだし。。。」
俺がおつまみやら何やらを物色していると。。。買出しに来ているのか委員長を見つけた。
洋一「あっ。。。委員長。晩飯の買出しに来ていたのか？」
俺は少し様子を伺っていると。。。

洋一「あっ。。。！！」

委員長は品物を取ると買い物籠には入れずに自分のポケットに押し込んだ。
洋一「なにやってるんだ！」
茜（委員長）「はっ。。。」
委員長はすぐに品物を元の陳列されたところに戻すとその場から逃げ出そうとした。俺はすかさず委員長の手を捕まえて。。。
洋一「委員長。なにやってたんだよ。なんでポケットにしまったりなんかしたんだ？！」
茜（委員長）「。。。洋一君。。。ごめんなさい。。。」
洋一「（。。。万引きしようとしていたのか。。。）」
俺は心では思っていたものの口には出さなかったが、委員長にとっては無言の圧力に感じたらしく。。。
茜（委員長）「。。。。。。。。。」
委員長は無言のまま下を向いていただけだった。俺は以前からこの界隈で十数件万引き被害にあっていた事を聞いていた。。。まさか委員長がやっていたなんて思いもよらなかった。しかし、多少なりとも犯人扱いのような態度をする俺自身に怒りを感じていた。。。
洋一「ほしいものがあったら言ってくれよ。俺払うから。。。」

茜（委員長）「違うの!!」

委員長は突然大きな声で叫ぶと。。。
茜（委員長）「ほしくなんかないの！ただ衝動に駆られただけなの！」
洋一「いいからいいから。。。とにかく買うものを買ったら家に帰ろう。叔父さんや叔母さん、それにマリレイも待っているし、、、」
しかし、そうこうしているうちに店の係りが俺たちの方へ近づいてきた。委員長は顔を強ばらせながらなんとか俺の手から逃れようとしていた。。。
店の係り「どうしたんですか？何かありましたか？」
洋一「騒がせて申し訳ございません。ちょっとした痴話げんかでして。。。」
店の係り「そうですか。このところ万引き被害が多いものですからねぇ。ちょとした騒ぎでも神経質になってまして、、、見たところ被害も何もないようですし、、、良かったです。。。何かありましたら呼んでください。」
そういうと店の係りは元のところへ戻っていった。。。
洋一「ふぅ。なんとかなったな。。。」
茜（委員長）「洋一君！どうしてあのまま突き出さなかったの！！」
委員長が俺を責めるように言った。しかし、俺は。。。
洋一「何もとってないじゃん。それに大きな声で騒ぐところじゃないし。。。」
茜（委員長）「。。。。。。。。」
洋一「委員長。俺もう行くよ。」
茜（委員長）「。。。洋一君。。。」
洋一「なに？」
茜（委員長）「。。。こんな私。。。嫌いじゃない？」
洋一「別に。」
茜（委員長）「。。。どうして。。。」
洋一「嫌うわけないだろ？何もとっていないんだし。。。もし、後悔があるのならやり直せばいいんだよ。」
茜（委員長）「。。。えっ。。。？」
洋一「俺の見てきた委員長ならきっとやり直せる。大丈夫だよ。」
茜（委員長）「。。。本当に。。。大丈夫なのかしら？」
洋一「自信持とうよ。委員長。」
茜（委員長）「。。。。。。。。」
俺は委員長をなだめながら必要なものを確認するとレジへ行き、買い物袋をまとめ終わるとそのまま委員長と一緒にスーパーを後にした。。。